製造業・建設業におけるデジタルファブリケーションの潮流

更新日:5月11日

前書き

労働を取り巻く環境は、政治・経済的な側面や技術の進歩から多大な影響を受け日々刻々と変化している。日本では2019年4月1日から働き方改革関連法案の一部が施行され、「働き方改革」の下、すべての企業で長期間労働の見直しや労働生産性の向上が求められている。また、ほとんどの先進国においても同様に労働時間の見直しや労働の効率性向上の取り組みは行われている。この背景には産業構造の変化や、老若男女の様々な事情を考慮した働き方の多様性が求められている現状、先進国における出生率低下や高齢化に伴う労働人口の減少がある。

さらに、産業構造の変化や労働人口の減少は賃金上昇にもつながるため、企業はいっそうの労働生産性向上に努力することになる。ただし、労働生産性向上の取り組みは単に向上させる取り組みであればよいということはなく、持続可能性を念頭に置いて取り組まなければならない。現在盛り上がりを見せているSDGs(Sustainable Development Goals)に見られる世界的な環境に配慮する運動から、世界中の企業は資源削減や省エネルギーを含む環境負荷低減の要請を受けいる。そのため、戦後の高度経済成長期で行われた環境負荷を無視する代わりに高い生産性を生み出すような企業活動を行うことは出来ない。

前述のような労働生産性向上や持続可能性への関心の高まりから、デジタル技術を使った労働の効率化や省資源化に注目が集まり、デジタル技術導入が盛んに行われるようになった。デジタル技術導入は一人当たりの労働生産性を向上させることから、労働人口の減少による生産量低下に対して有効な手段となる。さらに、デジタル技術導入は、高い技術力を持った労働者の高齢化に伴う引退で引き起こされる品質低下問題や技術継承問題に対しても有効な手段だと考えられている。

現在製造業を中心に盛り上がりを見せているインダストリー4.0は、デジタル技術活用により労働生産性向上や業務プロセス最適化やサプライチェーンを代表とする企業内外でのやりとりを円滑化し、最終的には企業活動の全体最適を図る取り組みである。もともとインダストリー4.0は、ドイツの国家戦略の一つで「ハイテク戦略2020」で実施されている10プロジェクトの1つから始まった取り組みだが、今では世界中に広がり様々な取り組みが行われている(例:アメリカを中心としたIndustrial Internet Consortium、中国の中国製造2025)。

建設業でも製造業のインダストリー4.0と同様の取り組みとして、デジタル技術により生産性向上や全体最適を狙うコンストラクション4.0が実施されている。コンストラクション4.0は、デジタル技術やロボット、3Dプリンタ、自律的に動く建設機器を建設現場に導入することで建設作業自動化や高度化を目指す取り組みである。日本ではコンストラクション4.0の取り組みとして国土交通省がICT技術等のデジタル技術を現場導入する「i-Construction」を推進している。

本レポートでは、インダストリー4.0の中で技術開発が進み成熟しつつあるデジタルファブリケーションや、建設業での現状と今後について議論していきたい。ここでいうデジタルファブリケーションとは、「レーザーカッターや3Dプリンタなどの、コンピュータと接続されたデジタル工作機械を使い、設計データ通りにさまざまな素材を切り出し、製作する技術」とする。現在使われている技術や大学や公的機関の研究成果をベースにフォーカスしその延長として議論を行う。

なお、本レポートでは弊社の技術的観点からの検証の一部分しか掲載できていないため、より詳しく内容を知りたい場合はご連絡ください。


デジタルファブリケーションの概要

本章では、デジタルファブリケーションの概要を記載する。また、デジタルファブリケーションの技術開発が進んだ契機であるインダストリー4.0についても簡単に説明する。

インダストリー4.0

インダストリー4.0は第四次産業革命とも呼ばれ、ドイツの国家戦略の一つ「ハイテク戦略2020」で実施されている10プロジェクトの1つで、製造業の生産効率を高めるために情報技術を製造現場に組み入れることを目指す「Industrie 4.0」を起源とする。提唱したドイツでは2013年以降大手製造業企業を中心に様々な取り組みが行われている。今では世界中の製造業で同様の取り組みが行われるようになった。

現在行われているインダストリー4.0の取り組みは、次の2点を目指している

  1. ネットワークに接続された生産設備やIoT機器、機械学習や深層学習を代表とするAI技術の導入により生産が最適化・高度化され、人との協調作業が実現したスマートファクトリ―(スマートファクトリ―のイメージは図1を参照のこと)

  2. システム間を高度に連携させ計画層から制御層までのシステム全体を最適化し社内外の業務プロセスを円滑化

デジタルファブリケーション

デジタルファブリケーションとは、3D CAD等のデザインソフトウェアを使ってコンピュータ上に作成した3Dモデルデータをネットワークに接続された3Dプリンタや工作機器に送信し、現実世界上に金属やアクリル樹脂、布や紙等の様々な素材を使って出力する技術を指す。デジタルファブリケーションと似た技術としてコンピュータ数値制御(CNC、Computerized Numerical Control)がある。CNCはインダストリー4.0が提唱される時代よりも前から存在する技術だが、デジタルファブリケーションはネットワークでつながることが前提である点や3Dプリンタ、レーザーカッターといった近年実用的になった技術を活用する点でCNCとは大きく異なっている。

デジタルファブリケーションは、3Dデータを作ることさえできれば、製造工程はコンピュータで制御された3Dプリンタや工作機器が自動で行う。このことは、製造の専門家ではない一般の人々が3Dモデルを作ることが出来れば、製造設備を貸し出すレンタル工作室を使った製造作業を可能にすることを意味している。近年のインダストリー4.0に関する技術開発・技術成熟による工作機器の小型化、高性能化、低価格化の動きも相まって、デジタルファブリケーションはシェアリングエコノミーの観点でも注目され始めている。


建設業におけるデジタルファブリケーションの概要

前章では、インダストリー4.0とその中で発展したデジタルファブリケーションの概要を記載した。本章では、建設業におけるインダストリー4.0と言われるコンストラクション4.0とデジタルファブリケーションについて記載していきたい。

コンストラクション4.0

コンストラクション4.0は建設作業のオートメーション化とデジタル化を推進する取り組みある。コンストラクション4.0では、3Dプリンタや自動建機、ドローン、ロボティクス等の新しいハードウェア技術や、建造物の3Dモデルをベースに設計から、施工、維持管理までの建設作業のライフサイクルをマネジメントできるBIM(Building Information Modeling)、現実世界で収集したデータを使ってデジタル空間で現実世界を再現し複雑なシミュレーションを可能とするデジタルツイン技術、AIやビッグデータ解析等のソフトウェア技術が建設現場で活用される未来を想定している(図3を参考のこと)。

本では大手ゼネコンが、AI技術やロボティクスを使った建設現場の自動化技術対して積極的な投資を行っている(表1)。

また、世界有数の建設企業であるBechtel社の創業者血族であるDarren Bechtel氏(高祖父が創業者)は、Brick & Mortar VenturesというAEC (Architecture、Engineering、Consruction)業界に特化したベンチャーキャピタルを2015年に創業している。 Brick & Mortar Venturesはこれまでに36社の建設業に関連した先端技術を取り扱うスタートアップに投資している。投資ポートフォリオからBrick & Mortar Venturesは、建設業のバックオフィス管理や現場管理を効率化する技術に特に注目しているように見受けられる。


建設業におけるデジタルファブリケーション

建設業におけるデジタルファブリケーションは、製造業におけるデジタルファブリケーションと同様に、3D CADで作ったデジタル世界上の3Dモデルを3Dプリンタや工作機械、ロボティクスを使って現実世界上に出力する取り組みである。建設業におけるデジタルファブリケーションの活用例としては模型の作成(図4)や、手作業では難しい複雑な造形物の出力(図5)が挙げられる。

また、デジタルファブリケーションに期待できることとして、建設プロジェクトの期間短縮、現場作業を行う人員の削減、現場管理の簡略化(図6)がある。

図6は、デジタルファブリケーションを建設業に実装することにより建設業の組織体制がどのように変化するかを現在(current)、転換期(short-term)、実装が進み成熟した将来(long-term)を示している。現在(current)と実装が進み成熟した将来(long-term)を比較すると、現在の組織体制はPlanning(計画)とConstruction(建設)で異なりそれぞれの実施時期が別れているのに対して、将来の組織体制はPlanning(計画)とConstruction(建設)で同時進行で作業が行われている。


結果として、現在よりも将来の組織体制の方が建設関与者が少なく、工期も短縮されることが期待される。

求められるスキル、ポジションも大きく変化を見せている。将来の組織体制では、建設現場に単なる現場作業員(Worker)は存在せず、3Dプリンタやロボティクスを扱う技術者(dfab technician)に置き換わっている。さらに、デジタルファブリケーションが適用される環境では次に挙げる新しいスキルを持った労働者の登場が予想される。

  • dfab programmer:ロボットや3Dプリンタのコンピュータ数値制御プログラムを開発・作成

  • dfab coordinator:3Dプリンタやロボティクスのコーディネート及び工法の決定、建設のオートメーション計画作成、3Dのモデル確認や検証及びBIMへの追加

  • dfab manager:デジタルファブリケーションが適用されたプロジェクト全体の管理

デジタルファブリケーションにおける建設業と製造業の違いは、製造業よりも建設業で出力される造形物サイズが大きいこと、造形に用いられる素材として建設業ではセメント、金属が多用されることが挙げられる。近年の3Dプリンタの技術が成熟したことで、セメントや金属の造形物が建設部材の一部として活用されるようになってきた。さらに、3Dプリンタを使って家をまるごと出力するプロジェクトも行われるようになってきている。

前述の通り、建設業のデジタルファブリケーションではさらなる3Dプリンタの活用が期待される。そのため、この後の議論は3Dプリンタに焦点を当てて行っていきたい。


建設現場で導入が進む3Dプリンタ

本章では、大型サイズの造形が可能かつ建設現場での活用が期待される3Dプリントについて記載する。本レポートでは建設現場で扱う3Dプリンタの材料としてセメント(コンクリート含む)、樹脂、金属を想定し、その用途を中心に今後議論を展開する。

表2は建設業界で利用が想定される3Dプリンタの技術(材料、機構、造形手法)と対応する3Dプリンタメーカの例を示している。建設業で想定される3Dプリンタの機構は主にガントリーとロボティクス(ロボットアーム)の2種類であることがわかる。造形手法に関しては4種類あり機構の種類よりも多い分類となっているが、ほとんどのメーカが材料押出法を採用している。結果として、建設現場で用いられる3Dプリンタは材料押出法を採用したガントリー型、もしくは、ロボットアーム型の導入が多く行われている可能性が高いことが考えられる。

表2に記載している3Dプリンタメーカのほとんどは新興企業(スタートアップ)であり、伝統的な建設機器を製造・販売しているメーカで3Dプリンタを開発し製造・販売している企業は見当たらない。ただし、スタートアップの中には3Dプリンタに関わる全てを自社開発するのではなく、例えば、産業ロボットメーカーのKUKA社のロボットアームに自社開発のプリンタヘッドやソフトウェアを組み合わせた3Dプリンタの開発を行っている企業も存在する。3Dプリンタメーカがどのような技術優位性や特許を持っているのか、他社の技術にどの程度依存するかはカタログやホームページ等の公開情報を見ただけではわからない場合も多い。その場合の情報収集手段として、プリンタメーカに対してメールでの問い合わせやインタビューすること、もしくは、業界に精通している第三者に調査委託やインタビューをすることが必要となる。

機構や造形手法によって、造形物の精度やサイズ、形状の複雑性、物性が変わってくるが、建設業で3Dプリンタを選ぶ場合、初めに考えるべきは対象とする素材、造形サイズが3Dプリンタで対応可能かどうかである。表3は、3Dプリンタメーカが公開しているカタログやホームページ、学術論文、3Dプリンタメーカへのインタビューを通じて収集した情報を基に作成した各素材の最大造形サイズ(実績値)である。

表3は、あくまでCovalentが確認できた情報をまとめているにすぎないため、メーカや造形手法によって最大造形サイズは異なる。気になるメーカがあればカタログの取り寄せやインタビューを行い確認いただきたい。表3からコンクリートが最も大きい造形物を作成することが出来ることがわかる。ただし、建材によっては材料が指定されている場合や、物性値や精度については満たすべき基準が存在するため、参考程度に見ていただきたい。

図7は3Dプリンタを活用して造形された世界中の構造物の例を示している。図7はセメント、金属の3Dプリンタを活用することで家や橋といった規模の構造物を作成することが可能であるという事実を示している。建物はセメントを材料として造形されているが、橋に関しては図7(d)が金属、(g)がセメント(コンクリート)を材料としている。橋という同じ建造物を作るにあたっても金属かセメントか材料を選択べることを意味しているが、3Dプリンタで造形可能なサイズであるか、要求するコストパフォーマンスや造形精度及び速度、再利用可能性を充足するか、規制面から利用可能か、等の観点から材料を選ぶことになる。

なお、これ以上の3Dプリンタの機構や造形手法等の技術的な内容の詳細議論は本レポートの趣旨と異なるため割愛させていただく。詳細議論が必要な方はCovalentまでご連絡いただきたい。


建設業における3Dプリンタの今後

今まではでデジタルファブリケーションの概要や建設業での役割、そして建設現場での利用が期待される3Dプリンタの現状を整理し議論を行った。本章では、建設業界における3Dプリンタの今後について、①他の先端技術との関連性、②材料技術との関連性、③コスト・資源、④助成による研究開発のサポート、⑤法規制・認証の観点の5つの観点から考察を行う。

①他の先端技術との関連性

3Dプリンタ自体はデジタルファブリケーションを実現するためのツールであるため、他のロボティクス技術やAI技術とも相性がよい。その中でも3Dプリンタと特に相性が良い技術として、ジェネレーティブデザインやトポロジ最適化と呼ばれるAI技術を使った3Dモデル作成・最適化が近年注目を集めている。

自明のことではあるが、3Dプリンタは3D CADで作成された3Dモデルを基に造形物を出力する。そのため、既存の手作業による工法よりも複雑な形状の構造物を作成でき、質量や物理学的な制約条件の下で形状を最適化するトポロジ最適化が可能である。また、近年では蓄積した設計データを基にAIを使って新しいデザインを生み出すジェネレーティブデザインの研究や利用も盛んに行われている。実際に複数のスタートアップが、3Dプリンタで造形することを前提にジェネレーティブデザインの思想を取り入れ、3Dモデルをトポロジ最適化するソフトウェアサービスを提供している(例:nTopology社のnTop Platformや、Oqton社のFactoryOS)。

日本でも、建築およびエンジニアリング企業の竹中工務店とオランダの金属3DプリンタメーカであるMX3Dが共同研究として、トポロジ最適化技術を用いた従来とは全く異なるデザインの3Dプリント構造用鋼製コネクタを作成している(図8)。

②材料技術との関連性

3Dプリンタの造形物は、材料の機械的性質によって出力サイズやデザインが大きく変わる。特にロボットアーム型の3Dプリンタは、3次元的な動きが可能であることから比較的デザインの自由度が高く、材料の機械的性質の変化に大きな影響を受けることが推測される。デザインにより使用できる材料が規定されるが、逆に材料によって造形できるデザインも規定される。

さらに、高機能な材料が登場することで、造形可能な建材や構造物のデザインが増えるだけでなく、工法も変化する可能性が高い。例えば、現在のコンクリート造形物は強度を一定以上にするために内部に鉄筋を挿入しているが、より高強度なコンクリートが開発されることで鉄筋を不要とするデザインや工法が開発される将来が考えらえる。材料技術だけでは達成できない場合でも、デザインを組み合わせることで達成できる場合があるため、デザインの自由度を高める3Dプリンタ活用の余地は充分にありえる。

③3Dプリンタ導入による期待効果

建設現場にデジタルファブリケーションの技術を導入することにより期待できることとして、工期短縮や人員削減が出来ることは建設業におけるデジタルファブリケーションの概要で記載した。さらに追加して、3Dプリンタ導入により期待出来ることとして、建設により発生する資源(廃棄物)削減が挙げられる(図9)。3Dプリンタ導入による資源削減効果はサステナビリティの文脈で議論している論文も数多く出版されており、3Dプリンタはサステナビリティの観点からも有用であるという期待を持たれている。

また、研究の中には3Dプリンタを建設現場に導入することによりトータルコストが削減されることを具体的に試算したものもある。表4は40MPaのコンクリートを使い多層建築の壁を従来工法と3Dプリンタを導入した工法で作成した場合のコスト試算をした研究結果を示している。試算結果から、3Dプリンタを導入した工法が従来工法よりも低コストで壁を建設出来ることがわかる。材料費は3Dプリンタを導入した工法の方が従来工法よりも割高だが、組み立てや運搬に使用される人件費が3Dプリンタを導入した工法では削減されるため、結果として、3Dプリンタを導入した工法の方がトータルコストで安くなっている。ただし、このコスト試算にはプリンタの本体価格、輸送費用、管理費用、保険費用は含まれていない点にはご注意いただきたい。

積極的な技術開発が行われ、まだまだ発展の余地が残っている現状では3Dプリンタを導入するよりも、建材を購入し現場作業員の手で現場作業を行った方が安い状況、つまり、3Dプリンタ導入による費用対効果が望めない可能性が高い。それでも将来的に3Dプリンタ製造の技術が発展・成熟し、導入コストが下がることで費用対効果が現れることは期待できる。今から、技術投資と考え3Dプリンタを導入し技術獲得を進め、3Dプリンタを使った工法を開発するのも一考に値すると考える。

留意する点としては、建設業におけるデジタルファブリケーションで記載した通り、3Dプリンタや他のロボティクス・建設機器を建設現場に導入するには、機器制御プログラムの開発を行うdfab programmer、オートメーションを設計・管理するdfba coordinator、プロジェクトを管理するdfab managerといった新しいスキルを持った人材を調達する必要がある。希少な人材の調達難易度や調達にかかるコストが大きいことは想像に難くない。将来的にデジタルファブリケーションの技術を導入する可能性があるのであれば、人材調達が必要となることを見越して徐々に人材育成を行うことも一考である。

④助成による研究開発推進

3Dプリンタの研究開発を促進するために投資を行っている団体も存在する。例えば、表2に記載されている金属3DプリンタメーカのMX3Dや、セメント3DプリンタメーカのXtreeEは、2014年から2020年まで行われた欧州委員会が実施した研究及び革新的開発を促進するための欧州研究・イノベーション枠組み計画(Horizon2020)で助成金を得ている。本取り組みは日本からも参加可能なプログラムであった。後継のプログラムであるHorizon Europeは、2021年から2027年までの実施を予定しており、本プログラムにおいても前身のプログラム同様日本からの参加も可能という状況である[1]、[2]。

他にも、英国の品質管理認証機関大手であるLloyd's Registerは、金属3Dプリンタの認証体系策定に貢献する研究に対して助成金を提供し支援を行っている。

⑤法規制・認証について

3Dプリンタで造形した建設部材が各国の建築基準を満たしていない場合や、そもそも3Dプリンタの利用を想定していない場合がある。さらに、顧客や業界で必要な認証を得られない場合や、基準が設けられていない場合があり、保守的な顧客の現場では3Dプリンタを利用することが出来ない可能性がある。まだまだ建設業にとって3Dプリンタは新しい技術であるため十分な法整備がされておらず、導入は手探りの状況にあると言える。

しかし、3Dプリンタ活用を促進するための認証についての取り組みは世界的に行われている。アメリカの認証企業ULとASTM(米国試験材料協会)が2020年に3Dプリンタに関する規格を開発するフレームワーク構築の覚書を締結し、規格策定を推進している[3]。

また、Lloyd‘s Registerと英国の3Dプリンタを使った造形のコンサルティングサービスを提供する企業であるTWIは、2016年から共同で発行している金属の3Dプリンタを使った造形物に関する認証ガイドラインの最新版を2020年5月に公開した[4]、[5]。さらに、ドバイ政府は建設の25%に3Dプリンタの造形物を使う計画を推進している[6] 。これらの状況から、建設現場での3Dプリンタ活用による造形は充分に期待できる。


後書

本ショートレポートでは、製造業・建設業におけるデジタルファブリケーションの在り方について議論し今後中心的な役割を果たすことが期待される3Dプリンタについて簡単に記載した。本レポートが未来のデジタルなものづくりへの興味を盛り上げ活用の一歩を踏み出す一助となれば幸いである。Covalentでは、技術を用いたサービス開発や、その実現に資する技術検証サービスを提供しているため、より詳細の分析結果を保有・整理している。

本レポートでは、あくまでさわりの部分に過ぎないが、世の中が変わっていく過程の中で、技術が本当に後押ししている様子を感じて頂けたであろう。

Covalentでは、製造業・建設業に限らず、不動産、医療、ヘルスケア、金融、サービス、教育など、幅広い分野で技術的観点から将来戦略を策定するノウハウ及びツールを提供しております。そして、今回ご紹介したデジタルファブリケーションの概念や主要技術の活用は、様々な分野で強弱は違うが可能である。

現代ビジネスで目の当たりにする変革には、デジタル技術の後押しが必須となりつつある。そのため、今回のような技術的観点からの分析は、今後の事業戦略を策定する上で、必須となるであろう。

本レポートではHW中心のイノベーションについて紹介したがSW技術の進化も今後の産業化の進展については重要な論点となるため、レポート内では弊社の部分的見解しか掲載できていない。さらに、技術的実現性や技術の評価、実際の導入の進め方、今後の産業化のシナリオ・スピード感など、より詳しく内容を知りたい場合はご連絡ください。

また、技術に関わる事業課題でお困りの際はお気軽にご連絡ください。



閲覧数:96回

関連記事

すべて表示